Blog

シティポップとアイドルの昨今

シティポップとアイドルの昨今

ここ最近ずっと気になっていたんですが、
アイドルでシティポップを採用する流れがあると
ほんのり感じていたんですが、
気になっていたCDをわにさんから頂いたので、
せっかくなのでちょっと記事を書いてみようと思います。

そもそも私のスタンスについてですが、
Perfumeを聴いたりはしますが、
基本的にアイドルが好きという訳ではないと思います。
アイドルを見てかわいいなと思うことはあっても
音楽を聴くかは別問題です。
Perfumeもまず音楽から入って、
テレビなどでキャラを知ってハマった流れなので、
アイドルにカテゴライズされるのかも知れませんが、
アイドルだから好きという訳ではありません(重要

さて、それをふまえた上で、
ここ最近のアイドルとシティポップについて。

まずシティポップとは何か。

シティ・ポップスとは、日本のポピュラー音楽のジャンルのひとつ。 主に1980年代に流行した、都会的なイメージを前面に出したポップスを指す。ムード歌謡をよりポップで現代的にしたものや、高年齢層へのアピールを強く意識したソフトなロックなどの総称である。和製AORなどとも呼ばれる。

というもの。ニューミュージックなどと呼ばれることもあります。
80年代を中心に盛り上がりましたが、
今も続けている人と言えば大御所で言えば山下達郎、
大貫妙子、吉田美奈子、荒井由実(現松任谷)らが
ニューミュージック三人娘と並び称されたりもしました。
要するに、80年代の都会志向音楽で、
その当時の都会的な雰囲気をフォークではないロックとして
ジャンルとして成立したものです。
現代のJ-POPの源流となった部分も大きいですね。

で、去年あたりから一十三十一、
ジャンク・フジヤマなどが注目される機会が増え、
「これはシティポップブームの波が来るかな?」と思っていたところ、
その波にのって来たのは意外にもアイドルだったのでした。
もっと新参のシティポップシンガーがでて来るかなと思ったんですけどね。
厳密にはアイドルではないですが、坂本真綾が
シュガーベイブのカバーなんかを出したり、
オリジナル楽曲がシティポップだったりしたので
流れがあるのは間違いないですね。
※山下達郎・大貫妙子らが結成したシティポップの源流となるバンド

で、頂いたCDですが、4人組アイドル「AeLL.」のリーダー西恵梨香さんが
ソロデビュー作としてリリースした「unJuor」というカバーアルバムです。
これが、帯にもシティポップの名曲カバー集であることを謳っています。
話を聞いて曲目を見てみると面白い。

1.ジャンク・フジヤマ – Morning Kiss

2.土岐麻子 – GIFT 〜あなたはマドンナ〜

3.流線形 – 恋のサイダー

4.八神純子 – 水色の雨

5.松原みき – 真夜中のドア

6.大貫妙子 – 都会

新旧織り交ぜた見事な名曲揃いです。
流線形を取り込んでくるあたり、もし西さんが選曲しているとするならば
本当にこの時代の楽曲が好きなことが伺える興味深い選曲です。

そして、実際のアルバムのダイジェストがこちら。

頂いたCDでも実際に全曲最初から最後まで通しで聴いたりしたんですが、
これは本人には手厳しいのかも知れませんが、
正直、アレンジに違和感があります。

アレンジのクレジットを見てみると
ST PRODUCTION (Track 1,4,5,6),夏目哲郎(Track 2),須藤雄毅(Track 3)
となっています。
ざっと調べてみましたが、下請け的に楽曲提供や
アレンジを行っている方々のようです。
iTunes Storeや公式動画などで他の曲を確認してみましたが、
DTMの範囲でアレンジしているような印象です。
やはり、という感じでして、ストレートに言ってしまうと、
この方々、おそらくシティポップに詳しくありません。
あるいは予算的に出来ないのかのどっちか。
選曲に対して、アレンジに温度差を感じます。

その原因はこのDTM感と、ジャンルへの理解の薄さに起因するものでしょう。
シティポップはそもそも生演奏が基本です。
当時はDTMなんてありませんからね。
バックトラックはスタジオミュージシャンによる演奏が理想でした。
また、アレンジ自体がシティポップという
ジャンル自体への理解をあまり感じさせませんでした。
唯一年齢の判明した夏目哲郎さんで30歳。
シティポップを聴いて育った世代ではありません。
その他の楽曲を聴いてもシティポップらしきものはなく、
経験がないであろうことが推測できます。
おそらく「都会志向」という部分だけを拾って、
オシャレっぽくしただけという印象を拭えません。

AeLL.でいつもお願いしているアレンジャーにそのままお願いしたようですが、
これは失敗だったと思います。
アイドルとしていつもの楽曲を期待している人にはベクトルが合わず、
シティポップを好んだ世代には曲をカバーしただけの
「シティポップもどき」に聴こえてしまったのではないかと思います。
これは非常にもったいない。せっかく面白い方向性でのアプローチなのに
どっち付かず的な仕上がりになってしまいました。
もう一度シティポップアルバムが出せるのであれば、
ちゃんと理解しているアレンジャーを起用すべきでしょう。
西さんの声質がシティポップ向きだっただけに
勿体ないと言わざるを得ません。

さて、これだけで話は終われません。
TwitterのTLでたびたび目にする「まじアーバン」の文言。
大阪堀江を拠点に活動するガールズグループ「Especia」さん。
アーバン(都会的)というからには聞いてみなくては。

最新Epのジャケットがこちら
1
なるほどアーバンな感じを知っているジャケットデザイン。
大滝瑛一やジャンク・フジヤマを彷彿とさせるジャケットです。
「シティポップの心」をわかっているものを出して来るなら
楽曲にも期待したくなるというものです。

この公式サイトの右下にSoundcloudで多くの曲を聴くことが出来ます。
あるいは以下からどうぞ。表示不具合あるようで埋め込みを削除しました。
Soundcloudアカウントページからどうぞ。

なるほど楽曲はかなりしっかりしてる。
ちゃんとわかってる人がアレンジしています。
音使いにその辺が表われていますね。
逆に残念なのがボーカル部分。
これは殆どのアイドルソングに同じことを感じているのですが、
なぜみんなユニゾンなのか。
ハモろうよ。ちゃんとパート分けようよ。
あと、せっかくこういうトラックに恵まれてるんだから、
発声法をきっちり押さえて欲しい。
この辺は経験やアレンジャーの判断で化けそうなので、
是非そういう部分での挑戦をして欲しいと思います。
こちらも本当にあとちょっとの感じなのに勿体ない。

以上、私の知る限りのシティポップの流れを汲み入れた
二組を音楽部分だけにポイントを絞って書いてみました。
CDの売上が頭打ちになって久しい昨今、
音楽の潮流に合わせてこういうアプローチがあることは
純粋な音楽好きとして嬉しく思う部分です。
アイドルであろうとなかろうと、こういうアプローチと
それを聴く側の趣味の多様化があれば
日本の音楽はまだまだ捨てたもんじゃないのではと思います。

Comment

コメントはまだありません。

Comment Form

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA